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ニューヨーク市における学校の再開について―その2(12月1日時点)

以前、秋に新学期を迎えたニューヨーク市内の学校がどのような対策を講じて再開したかについて9月21日時点の状況を報告したところである。今回は再開後の様子とその後の感染拡大による2度目の学校閉鎖・再開について述べる。

ついに学校再開!がしかし…(9月末~)

学年ごとに段階的に学校が再開した9月末~10月上旬。ちょうどその頃、市内含む一部地域でクラスターが発生した。州知事は10月6日にクラスターと周辺地域に最低14日間の活動規制措置「Cluster Action Initiative」を執る行政命令を発出することを発表。

感染者数や陽性率のデータをもとに、ホットスポットを3段階のゾーン「レッド(クラスターの中心地)」「オレンジ(警戒地域)」「イエロー(要注意地域)」に分け、ゾーンごとに、多人数での集会、ビジネス、飲食店、学校、礼拝所の利用の5項目について規制しており、レッド・オレンジの地域では学校はリモートラーニングのみ、イエローの地域では対面授業に参加している生徒とスタッフに週に一度のテストを課している。

●新たな施策の追加

これらの感染拡大を受け、市はいち早く感染状況を把握し学校を安全に保つため、9月29日にランダムCOVID-19テストプログラム(以下、「ランダムテスト」)を実施することを発表。テストパートナーである病院等がランダムに各学校のスタッフと生徒を選び(対象人数は学校の規模によって異なる)月に一度の頻度でテストをするというもので10月9日から実施されている。

このランダムテストは、州がイエローの地域内の学校に課している上述のものとは別であり、それに追加する形である。

また、市と上記のテストパートナーらで構成される DOE(Department of Education) COVID Response Situation Roomがこれらのテストの実施件数や陽性率を学校ごと、地域ごとに表やマップにまとめてホームページ上で公表し、生徒や親が自分の学校の最新情報を得ることができるようになっている。

ランダムテスト実施の案内ビデオ 参照:NY市HP

●授業形態の変更

10月26日に市長は280,000人(全体の26%)が対面授業に参加していると発表。74%が対面授業を含む学校の再開を希望したという7月当初の結果とは大きくかけ離れた結果であった。

学校再開時にフルリモートの授業を選択した生徒は、11月2日から15日の間に希望すれば11月30日の週あるいは12月7日の週から“ブレンド型”への変更ができる機会が設けられ、市は上記期間以降は変更不可との方針を示し、対面授業への参加を促した。ちなみに、ブレンド型授業とは対面授業と遠隔授業を組み合わせた授業モデルを指す。詳細については「ニューヨーク市における学校の再開について(9月21日時点)」 をご覧いただきたい。

ついに第3波到来…そして2度目の学校閉鎖(11月~)

10月から学校におけるランダムテスト実施等の対策を講じるも、11月に入ると一日あたりの新規感染者数は1000人を超過。感染拡大は収まらず、ニューヨーク市にもついに第3波が到来した。

NY市新規感染者(12月1日時点)参照:NY市HP

●決断の時

夏の時点で、市長は市内で直近7日平均の感染率が3%を超えた場合は、学校を閉鎖し全員遠隔授業へ切り替えるという基準を示していた。11月13日、この平均感染率が2.83%となり、学校閉鎖の基準である3%に近づいていることを踏まえて、11月16日(月)から学校を閉鎖するかどうかという瀬戸際を迎えた。この時は閉鎖は見送られた。

親も教員も感染率を注視していた矢先、ついに11月18日に市内で直近7日平均の感染率が3%となったことから、市長は11月19日から市内の学校を閉鎖し遠隔授業へ移行することを発表した。この時点ではいつ再開できるかといった具体的な目途は立っていない状態であった。

●再開に向けて

11月29日、市長はGrade 5以下の児童に関しては12月7日(月)から、特別支援学級については、全ての学年について12月10日(木)から学校を再開する方針を発表した。つまり、2度目の学校閉鎖時に基準として掲げていた7日間の感染率平均3%を下回るかどうかよりも、学校再開を優先したのである。再開にあたり、より学校を安全な場にすることを目的としてこれまで月1回の頻度で全学校において実施していたランダムテストを毎週1回に強化することとした。したがって対面授業を希望する生徒はテスト同意書について、“任意”ではなく、提出しないかぎりと学校に通うことができない、とした。

さらに、校内のスペース等の条件が整っている学校に関しては、すでにブレンド型を選択しているあるいは今回ブレンド型に変更した生徒に対して、5日間対面授業に移行することが望ましいモデルであると説明。実質的にブレンド型授業からの脱却、コロナ以前の完全対面授業へ戻していく強い意思を感じる決定である。

学校現場や生徒の混乱を防ぐためにも、今後感染拡大が収まっていき、3度目の学校閉鎖という事態が起きないことを願うばかりである。

(藤原所長補佐 長野県派遣)