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ニューヨーク市における学校の再開について(9月21日時点)

今秋コロナ禍で新学期を迎えるアメリカの学校にとって、どのような対策を実施し、いつ再開するかは大きな決断である。ニューヨーク市内の公立学校には110万人もの生徒が在籍 しており、保護者の数も考慮すると学校再開の影響は計り知れない。そこで、市は7月に保護者を対象として学校再開に関する調査を実施。対面授業を含む学校再開を全体の74%の保護者が望んでいるという結果を受けて、ニューヨーク市長は対面授業と遠隔授業を合わせた“ブレンド型”授業を導入すると発表した。

●ブレンド型授業とは

“ブレンド型”授業とはいったいどのような授業なのか。

7月上旬に市の教育局は学校長に向けて5つのモデルを示した。いずれのモデルの場合も、生徒を複数のグループに分け、対面授業の日(登校する日)をグループごとにずらし、一日あたりの生徒数を減らす(9~12人/クラス)というものである。各学校長は、対応できる教員の数や広さなどの学校に適したモデルを選び、実情に応じてモデルの一部変更を申請することができるが、少なくとも授業全体の33%以上は対面授業とするように要請されている。学校側は最適なモデルを選択した後、保護者及び生徒に対して提案し、アンケート調査を実施する。その結果を元に学校はモデルを仮決定する。次に、市の審査を受け承認されると正式に採用するモデルが決定する。


●授業形態の選択

生徒は対面授業と遠隔授業を組み合わせたこの“ブレンド型”に参加するのが基本であるが、学校が上述いずれのモデルを採用するとしても、今学期すべての授業をリモートで受けるという“フルリモート”を選択することが可能である。“フルリモート”を希望する場合は、指定のフォームから授業再開前はもちろん、学期中いつでも選択・変更することができる。一方で、事前に“フルリモート”を選択している生徒が“ブレンド型”へ変更したい場合は、変更できる時期があらかじめ定められており、11月初旬まで変更ができない。

●学校におけるコロナ対策

次に学校再開に向けて市がどのような対策を打ち出してきたか述べる。

1.看護師の設置
 ニューヨーク市長は8月13日に、9月の健康で安全な学校再開初日までに、すべての公立学校に看護師(Certified Nurse)を常駐させると発表した。看護師のいない約400校については、NYC Health + Hospitalsと連携し、補充するとしており、9月14日時点で250人超の看護師と学校のマッチングを終えたという。

2.換気検査及び修理の徹底
 市はすべての公立学校において、換気システムの検査を実施し、96%の教室は市の基準を満たしていた。基準を満たしていない教室については、教育局が早急に修理を実施する予定であり、修理が終わっていない場合は学校が再開したとしても該当する教室を使用することはできない。

3.屋外授業の実施
 8月24日、ニューヨーク市長は、9月から予定されている市内の学校について、屋外授業の実施を発表。体育・音楽・演劇などの広いスペースを必要とする科目を中心に、校庭のほか、屋外スペースのない学校は、隣接する道路やBoroughごとに指定された公園などで安全対策を行った上での実施が見込まれている。

4.万が一校内で感染が確認されたら
 再開した学校で陽性が1件確認された場合には当該クラスを閉鎖し教師・生徒は14日間の自主隔離を行う必要がある。また、異なるクラスで2件以上発生した場合は学校全体を閉鎖し、オンラインクラスに移行するなど、市が決めたルールに従わなければならなない。すでに、9月15日時点で市内56校でスタッフの感染が確認され 、スケジュールどおりの再開ができない状況になっている。

これらの感染者発生状況については、NYC Schools Account (NYCSA)にサインアップしておけば、電話・メールあるいはテキストにより保護者及び生徒は自分の通う学校の情報を受け取ることができるようになっている。NYCSAはすべての生徒ごとにIDが割り振られてた個人専用のポータルサイトであり、州の共通テスト結果や成績などを確認するための既存のシステムである。10言語に対応している。

●対面授業再開のスケジュール変更

9月1日、ニューヨーク市長は同月21日(月)から対面授業を再開すると発表し、各学校は16日から再開に向けたオリエンテーションを開始していた。その後、市は17日になって、教員不足や感染対策などの理由により、一部学校(学年)の対面授業再開の延期を発表した。 フルリモートを希望している生徒は予定どおり21日から授業が開始される。また、ブレンド型を選択している生徒もリモート授業は21日から開始される。一方で、ブレンド型を選択した生徒の“対面授業”再開スケジュールは以下のとおり学年や学校形態によって細かく分けて定められているが、大まかに見ると下の学年から順に再開していくというものである。

※¹ 3-K:3~5歳、Pre-K:4~5歳

※² District 75は特別支援学級

21日から順次対面授業が再開していくが、各学校での感染拡大状況によっては臨機応変な対応が求められるだろう。今後の動向を注視していきたい。

(藤原所長補佐 長野県派遣)