18 1月 2017

ベッドバグの恐怖は続く

害虫駆除会社の大手、オーキンは2017年1月3日、ベッドバグ被害主要都市ランキングを発表した。これは、アメリカ全州に支店を置くオーキンが、2015年12月1日から2016年11月30日の間にベッドバグの処理を行った件数が多い都市のデータを元にしたランキングで、一般住宅だけでなくホテルやオフィス、商業施設なども件数に含まれる。

ランキングを見てみると、不名誉な1位は、同ランキングが行われてきた6年間で初めてトップ5入りを果たしたメリーランド州のボルティモア。2位はワシントンD.C.、続いて昨年1位であったシカゴ。そしてニューヨークは昨年と同じく4位となった。このランキングが一企業の駆除処理のデータに基づくものとはいえ、当職の住むニューヨークが上位にランクインしているとやはり気分は良くない。

ベッドバグ問題は、10年程前まではアメリカではほとんど話題になっていなかったが、今では全米で大きな問題となっている。そもそも、ベッドバグとは何か。ベッドバグは日本では「トコジラミ」という正式名称であり、「南京虫」という名でも知られているカメムシ目に属する昆虫である。ベッドバグの栄養源は血液のみで、特に人間の血を好むというから厄介である。また注目すべきはその繁殖力で、メスは1日に5~6 個卵を産み続け、産卵数は 生涯で500 個程度にもなるという。吸血しなくても温度によっては1~2年程度生き続けることができるという調査結果もあり、生存能力も高い。しかも、成虫で5~8mmというりんごの種くらいのサイズから、衣服の襟の隙間にさえも隠れ、自由自在に移動をすることができるため、誰もが家に持ち帰る可能性をはらむ。けして不潔だから生まれて増えるというわけではないのだ。幸いにも感染症の媒介は今のところ確認されていないが、その繁殖力や吸血された後の眠れないほどの痒みなどから、ベッドバグは人々を恐怖に陥れてきた。

ニューヨークにおいても、住宅だけでなく、2010年にVictoria’s Secret や Abercrombie and Fitchなどの人気ブランドの店舗がベッドバグにより一時閉鎖に追い込まれ経済的打撃を受けたり、医療機関でベッドバグが発生するなどの事案があった。また、近年でも高級ホテルでの被害が報告されている。ニューヨーク市は、市のウェブサイト上にベッドバグに関する特設ページを2011年から立ち上げ、ベッドバグの基本的なデータから対処方法、ベッドバグ発生時の施設への規制内容などあらゆる情報を提供し、ベッドバグへの対応を行っている。しかし残念なことに、昨年報告のあったアメリカ自然史博物館研究者の調査によれば、ベッドバグの多くが突然変異を起こし、今までの薬剤への抵抗力をつけており、今後もベッドバグとの戦いは続きそうである。

暖房完備のホテルなどでは一年中発生しうるが、一般的には初夏から徐々に増えていくベッドバグ。外に出かけた際は、なるべく床に荷物を置かないようにしたり、帰宅後に衣服への付着がないか確認する、家の中ではタンスの後ろや部屋の隅などを定期的にチェックする、中古品の家具や寝具には気をつけるなど、自身でできることはしておきたい。そしてもし家で発見してしまった場合は、とにかくすぐに家主又は管理会社、駆除業者などに連絡し対応しなければならない。

※家主にベッドバグ根絶の義務があることがニューヨーク市の規則(Housing and Maintenance Code, Subchapter 2, Article 4)で定められているため、賃貸物件の場合は、入居者は家主又は管理会社に連絡を行う。
(和歌山県派遣 丸野所長補佐)