23 12月 2020

ニューヨーク州における通行料徴収の完全キャッシュレス化

11月13日の深夜から11月14日早朝にかけ、州内の570マイル(約917キロ)にも及ぶ高速道路の料金徴収が完全キャッシュレスへと移行した。

ニューヨーク州を含むアメリカ北東部では、日本のETCのような、E-ZPassと呼ばれる電子料金徴収システムが導入されている。E-ZPassの取り付けは至って簡単で、オンライン申込後に送付されたE-ZPassの機械を車内のフロントガラスに貼り付けるのみである。E-ZPassは紐づけしたクレジットカート又は口座からの自動チャージ式で、有料区間を通過した際に通行料金がチャージ金額から引き落とされる。E-ZPassで支払いすると5%の割引が適用され、通勤などで頻繁に利用するユーザーに対してはさらに割引が適用される。

ニューヨーク州において、E-ZPass による料金徴収システムは1993年にSpring Valley料金所で初めて導入され、その後3年半をかけ全ての料金所に導入された。E-ZPassによる料金領収システムが整備された料金所では、E-ZPassレーンと現金支払いのレーンが別々に設置され、E-ZPassを搭載している場合、現金支払いレーンよりもスムーズに料金所を通過することが可能になった。しかし、現金支払いレーンでの一時停止は当然のこと、E-ZPassレーンを通過する際にも、速度制限である時速5マイル(時速約8キロ)まで減速する必要があるため、料金所を通過する際に一定の渋滞は免れなかった。

(E-ZPass専用レーン、現金及びE-ZPassレーンに分かれている料金所)

そこで始動したのが、2012年に稼働した完全キャッシュレス料金徴収プロジェクトである。ニューヨーク州が目指したのは、完全キャッシュレス料金徴収のみならず、料金所自体の完全撤去である。料金所自体を撤廃することにより料金徴収のために車は減速する必要がなくなり、渋滞や事故の減少が期待される。料金所の完全撤廃をどのように可能にするのか。とりわけ、E-ZPassを保有していない運転手からどのように料金徴収するのか。

これを可能にしたのが、最先端のセンサーとカメラである。E-ZPassを搭載している場合は従前どおり、有料区間を走行した際自動的にチャージ金額から引き落とされる。E-ZPassを搭載していない場合は、設置されたセンサーとカメラが車のナンバープレートを読み込み、陸運局(Department of Motor Vehicle: DMV)に登録されている住所を使用し、車両の登録所有者の住所宛に料金請求書が郵送される仕組みになっている。ニューヨーク州では州法により、請求書が適切な所有者に郵送されることを保証するために、陸運局に登録している住所を最新に保つことを運転手に義務付けている。請求書は30日から40日後に郵送され、請求書を受け取ったら30日以内に支払いを完了する必要がある。仮に30日以内に支払いが完了していない場合、遅延料が発生するほか、車両登録を取り消される場合がある。

2012年11月、MTA bridges and tunnels(ニューヨーク州の公社)が管理するThe Henry Hudson Bridgeで完全キャッシュレス料金徴収が試行的に実施された後、同社が管理する残りの6つの橋と2つのトンネルについても2017年までに完全キャッシュレス化された。MTA bridges and tunnelsによると、完全キャッシュレス化により運転手が節約することができた時間は、200万時間以上にも及ぶと報告されている。

この結果を受け、州知事は2017年に完全キャッシュレス化を高速道路へ拡充することを発表し、2018年には3億5,530ドル(約370億円)の予算が組み込まれた。そして、2020年11月に全ての高速道路での完全キャッシュレス化が完了し、最先端のセンサーとカメラを備えたガントリーが高速道路上または出口に配置された。これをもって現金支払いは一切受け付けられなくなった。現在料金所の撤収工事も進められており、2021年中に全ての料金所の撤収が完了する予定である。

(最先端のセンサーとカメラを備えたガントリー)

知事はこの完全キャッシュレス料金徴収について、「通行者の時間を節約するだけでなく、渋滞緩和や事故の減少、アイドリングの必要性がなくなることによる温室効果ガスの排出の削減といった、さまざまな効果が期待される。」と述べている。

州政府はE-ZPassの取得を促しており、完全キャッシュレス化の始動にあわせ、E-ZPassのアカウントを簡単に管理できるモバイルアプリ「TOLLS NY」をリリースしたほか、2021年1月1日以降はE-ZPassを保有していない者に対し、30%の料金値上げ及び請求書ごとに2ドルの追加料金を課す旨を発表している。

(モバイルアプリ「TOLLS NY」)

(有馬所長補佐 神戸市派遣)