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デブラシオ次期市長の新政権はどこに重点を置くのか

ビル・デブラシオ次期市長は「二都物語」をテーマにした結果、ニューヨーク市長選に当選することができたと言われています。この「二都」というのは、ニューヨーク市が拡大する一方の貧富の差によって、事実上、二つの都市になってきていることを意味しています。また、ブルームバーグ市長はマンハッタン島に住む金持ちで、マンハッタン以外に住む貧しいニューヨーカー(住民)の苦しい生活をあまり理解していないというイメージがありました。ブルームバーグ市長の12年の任期が終わろうとしている中、住民の大半が転換(チェンジ)を期待していることを察知したデブラシオ氏は、貧富の差や差別的な警察の「Stop and frisk」方針(通行人を呼び止めて身体検査を行う)などの問題に取り組むことを公約し、人気を集めたのです。貧富の差については、ニューヨーク市に住む高所得者の市の所得税の税率を引き上げ、そのお金を子供の教育に回す、Stop and friskについては、徹底的に見直す、あるいは廃止するとの政策案を公約の柱にしました。

一方で、住民は経済問題や警察による差別的と広く見られている行為などを問題視しても、12年前に比べて(ジュリアーニ時代から続けて)さらによくなったニューヨークの経済や治安を損ないたくないという意見も根強くあります。さらに、ニューヨーク市を運営するためには、富裕層のサポートも必要です。選挙運動の段階と就任準備を行う段階とでは、デブラシオ氏の重点が多少異なってくることも考えられています。

12月5日に発表された警察コミッショナーの選任について、デブラシオ氏はNYPD内部の黒人とスペイン人の候補ではなく、90年代、ジュリアーニ市長が警察コミッショナーとして任命したウイリアム・ブラットン氏を「再任命」しました。

デブラシオ次期市長は選挙中はかなり左寄りになっていたにもかかわらず、当選してからは少し保守的になったのではないかという印象も見られます。これから任命するスタッフや決定する方針は、言われていたほど革新的にならない可能性もあります。政権移行チームのメンバーリストに「改革派」のメンバーが多く含まれていても、現時点で判明しているトップ・アドバイザーやコミッショナー等の多くは経験豊富な方々であり、根本的な改革よりも、徹底した行政運営の方を重視するのではないかと見られています。

一方で、市政の転換を前進させる重要な人物がいます。それは、デブラシオ氏の夫人シャーレイン・マックレイです。メディアによると、デブラシオ氏の「第一顧問」的な存在になると言われており、ニューヨーク市にとって一番大きな改革要因になる可能性があります。シャーレイン夫人はヒラリー・クリントンと同じような「パートナー型」夫人とよく言われており、各メディアによると、選挙戦略にしても、政権の方針にしても、かなりの影響力を持っていると見られています。貧富の差、人種差別、低所得者の抱える問題等の政策に尽力すると予想されています。

デブラシオ次期市長がブルームバーグ市長時代に成果を生んだ政策の継続と自分の公約した経済・社会・行政等の改革をどうやって組み合わせるかがこれから注目されます。

参考