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松井市長、パールハーバー(アリゾナ記念館)でヒロシマの思いを語る-広島市長ホノルル訪問 その3-

2012年9月18日

パール・ハーバー;真珠湾は、第二次世界大戦が始まった場所として記憶される、日本人にとっては特別な地であろう。現在、旧日本軍の攻撃によって沈められた戦艦アリゾナ号の上には、艦をまたぐような形で記念館が建てられている。年間120万人の日本人観光客が訪れるハワイであるが、このアリゾナ記念館を訪問する日本人はそれほど多くはないだろう。これまで同館を訪れた日本人要人の最高位は2008年12月に訪問した河野洋平衆議院議長(当時)。今年6月8日、広島市の松井市長が日本の自治体首長として初めてこの地でスピーチを行った。

献花をする(左から)金子副議長、マルチネス氏、松井市長、深山会頭

スピーチをする松井市長

スピーチの要旨
  • 本日は、アリゾナ記念館設立50周年という記念すべき節目に訪問し、こうして花を手向けることができたことをうれしく思う。ここで亡くなられた方々の御冥福をお祈りする。
  • この壁面には多くの犠牲者の名前が刻まれている。そして広島では、原子爆弾によって14万人もの人々が犠牲となった。いわば、日米の戦争は、このパールハーバーで始まり、広島・長崎の市民が大きな犠牲を払う結果となった。
  • しかし、両国には、長い友好の歴史があり、その長さに比べれば、こうした歴史的事実のあった期間はほんの一時にすぎない。「和解による平和」が、今こそ求められている。
  • 事実、私は、このパールハーバーのあるホノルル市の市長と、友好関係にある。私とホノルル市長は、過去の憎しみの連鎖を断ち、未来に向けて歩むことがいかに大切であるかを知っている。
  • 今、皆さんは、この場所に眠る戦没者の慰霊のためにここに来られているのだと思う。和解によって、平和な世界を実現することをここで誓いたいと思う。皆さんにも誓っていただきたい。

(2012年6月14日広島市記者会見資料より)

スピーチは予定されていたものではない。広島市議会金子副議長、広島商工会議所深山会頭とともに献花を行った際、同館の主任歴史家マルチネス氏から来場者へ市長の紹介があったため、急遽行ったものである。「(日系)ハワイ移民の3分の1は広島出身者であり、まさにその広島へ原爆が落とされたという事実」「そして多くの人が亡くなったという悲しい事実」「憎しみを超え未来へ向けて平和な世界を実現することをみんなで誓いましょう」という、切々と語る平和への熱いメッセージに、100人以上の来場者から盛大な拍手が寄せられた。偶然居合わせた日本人カップルが「誓った?」「うん、誓った」と会話している声も聞こえ、日本人の若い世代の人へもメッセージが真摯に受け留められていることを嬉しく思った。

同館では、昨年7月に裏千家による献茶式が行われている。式典にはアバークロンビー州知事、ウォルシュ米太平洋艦隊司令官夫妻、アリヨシ元州知事夫妻(※1)、真珠湾退役軍人ら約500人が出席。同館で行われた初の日本側主導の平和関連行事となった。在ホノルル日本国総領事館加茂総領事は、「戦争が始まったここホノルルから日米の戦後の友好関係が始まったと実感」した瞬間だったと語っている(※2)。日本への意識の変化が、今回の松井市長のスピーチによりさらに加速し、マルチネス氏が何度も繰り返した言葉「平和と和解」が一段と進むことを願う。

 

  • 日系米国人初の州知事であり、彼の妻ジーンさんの呼びかけによりこの献茶式が実現した。
  • 在ホノルル日本国総領事館ウェブサイトより

 

 

 

ニューヨーク事務所 牧所長補佐(広島市派遣)

 

参考