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米国最大の犯罪抑止イベント「National Night Out」を視察

先日、全米で毎年8月に開催される犯罪抑止イベント「National Night Out」を視察してきました。

National Night Out(以下「NNO」という。)とは、地域社会における犯罪抑止活動の一環として、毎年、全米の各コミュニティ単位で行われているイベントです。

1984年に始まったこのイベントは、地元警察と地域住民が直接触れ合って双方の交流や情報交換を促進し、地域社会における治安の向上を図ることを目的としています。また、参加した子供達に地元警察への親しみを感じてもらうことで、将来の非行防止に資する狙いもあります。

NNOは毎年8月の第一火曜日に行われることが恒例となっています。これは、記念すべき第1回目のNNOが1984年8月7日火曜日に行われたことに由来しているからです(ただし、テキサス州については気候の影響により毎年10月に行われています。)。

第1回目のNNOは、合計23州に跨る約400の地域が参加し、参加者は250万人以上に上りました。その後、NNOは米国全土へと広がっていき、現在では、50ある全ての州(+ワシントンDC)及び海外領土において、約3,800万人もの人々が、毎年いずれかのNNOに参加しています。

ここニューヨーク市では、ニューヨーク市警察(以下「NYPD」という。)の各分署が中心となってNNOを開催しています。

筆者は、本年(2014年)8月5日の火曜日に、市内ブルックリン区の南部を管轄する62分署のNNOに参加しました。同署のNNOは、午後6時から午後9時までの間、同署周辺の道路を封鎖し、そこを会場とする形で開催されました。

午後6時過ぎに会場へ足を運ぶと、既に多数の地域住民で溢れ返っており、路上に立ち並ぶ露店の前には、ハンバーガーやホットドッグといった食事を求める人々が長蛇の列を作っていました。また、その奥に設置されている「エア遊具」で、幼稚園から小学生ぐらいの子供達が無邪気に遊ぶ姿も見られました。もちろん、こうした露店で配られる食事や遊具は、全て無料で提供(開放)されています。

会場となっている道路の中心には、NYPDやニューヨーク市の緊急事態管理室(Office of Emergency Management(OEM))といった公的機関のほか、地域の弁護士事務所、銀行といった各種法人や、この地域を拠点とする州議会議員などがカウンターを構え、参加者にパンフレットや記念品を配布していました。

また、目隠しをした62分署の警察官が、スイカ割りのように箱状のものを棒で叩き割り、箱の中から出てきた飴やチョコレートなどのお菓子を周りで見ていた子供達がかき集めるといった、米国らしい催しも行われていました。

筆者の同僚であるGillam上級調査員も、コミュニティ緊急事態対応チーム(Community Emergency Response Team(CERT))の一員として、地元クイーンズ区Flushingで行われたNNOに参加しました。

FlushingのNNOはNYPDの109分署が主催しており、会場には公立小学校の校庭が利用されました。

会場内では、ハンバーガーやホットドックを無料で配る露店やエア遊具はもちろんのこと、当該地域を基盤とする政治家や、米国では大手民間企業として知られているTarget Corporationもカウンターを設置していたそうです。

また、催し物として、フェイスペイントやタトゥシールを体験できるコーナーのほか、中国の太鼓による演奏、獅子舞踊り、ペルーダンスといった地域性を加味したパフォーマンスが行われるなど、会場内は大いに盛り上がっていたそうです。

NNOの最大の特徴は、組織の母体が異なる各州・市・郡などの警察が、ボランティア団体やNPO法人又は民間企業などと連携の上、米国全土において、同じ日に同じ目的のイベントを主導しているという点でしょう。

また、犯罪抑止という基本方針さえ踏まえていれば、あとは主催者の判断でそれぞれの地域の実情に即したイベントに色付けすることが可能というのも、米国らしい特色と言えます。

今回、実際に足を運んでみて、子供から老人に至る地域住民が夏の風物詩のごとくNNOを楽しんでいる姿が、強く印象に残りました。

地元の自治体や警察が地域住民とのつながりを強めることは、治安の向上という観点からしても大変重要です。そういった点において、米国のNNOは日本でも大いに参考となる事例と言えるでしょう。

所長補佐 松重

nno1
62分署のNNOにおいて露店の前に行列を作る参加者
nno2
109分署のNNOにおいてCRETが配布する災害対策用のパンフレットに興味を示す参加者