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ニューヨーク市のストリート改革の取組②~2010年代からスタートしたニューヨーク市のストリート改革~

 前回の記事(ニューヨーク市のストリート改革の取組①)では、コロナ禍におけるオープンストリートプログラムについて紹介したが、このようなストリートを公共空間として利活用する取組は、コロナ禍以前の2010年代からニューヨーク市のストリート改革として取り組まれていた。一方で道路渋滞問題に対しては、自動車社会からの転換を図る取組が公共空間の利活用と並行して行われている。
 そこで本稿ではこのような取組の事例の一部について紹介することとする。なお、紹介する内容については、ニューヨーク市運輸局(Department of Transportation)のホームページの掲載内容を参考にした。


(ストリートの公共空間としての利活用)
① プラザ・プログラム 車道や駐車スペースなどを「プラザ」と呼ばれる社会的な公共空間に作り替える運輸局管轄のプログラム。地域住民や事業者の提案・申請を受け、運輸局とのパートナーシップのもとで行われる。運輸局はプラザの設計と建設への資金提供は行うが、申請者は運営管理に関する資金調達計画やメンテナンス計画、地元ステークホルダー最低10者からの支援表明などが申請の際に求められ、完成後の利活用・メンテナンスも地域住民や事業者によって行われている。利活用の事例としては、沿道の公園やカフェとの一体的な空間の形成や、マーケットやアート活動の場としての利用などが挙げられる。2021年6月末日時点でプラザは市内73箇所に設置されている。

交通島スペースを利用したプラザの事例(ニューヨーク市プラザプログラムアプリケーションガイドラインより抜粋)交通島スペースを利用したプラザの事例(ニューヨーク市プラザプログラムアプリケーションガイドラインより抜粋)
交通島スペースを利用したプラザの事例(ニューヨーク市プラザプログラムアプリケーションガイドラインより抜粋)

② カー・フリー・アースデー アースデー(4月22日)前後の週末に開催されるタイムズスクエアとユニオンスクエアの間の30ブロック、約2.5kmにわたって、午前9時から午後3時まで車両通行を規制して、歩行者空間化するストリートイベント。沿道ではダンスイベントや路上ヨガクラス、環境プログラムなどが開催される。2016年からスタートし(スタート時は6ブロック)、今の規模まで拡大してきた。
カー・フリー・アースデーの様子(ニューヨーク市HP掲載資料)
カー・フリー・アースデーの様子(ニューヨーク市HP掲載資料)

③ サマー・ストリーツ 8月の第1週から第3週までの土曜日の午前7時から午後1時の間にマンハッタン中心部の縦横約7マイル(10km)を歩行者空間化し、ウォータースライダーなどの多彩なアクティビティや、パフォーマンス、アート等公募により提案された様々なイベントが開催される。
2021サマー・ストリーツ開催案内(ニューヨーク市HP掲載資料)
2021サマー・ストリーツ開催案内(ニューヨーク市HP掲載資料)

(自動車社会からの転換を図るための取組)
① 自転車シェアリングプログラム ニューヨーク市とLyft社の官民パートナーシップによって運営される2013年からスタートした全米最大規模の自転車シェアリングプログラム(参考:CitiBikeホームページ)。Citi Bikeシステムと呼ばれるシェアバイクプラットフォームを市内に設置し、専用アプリを通じて利用料を支払えば、誰でも市内各地750箇所以上に設置されているドッキングステーションの好きな場所で利用・返却が可能な仕組みとなっている。運営及び維持管理は、民間資本、スポンサー契約及びメンバーシップからの収益(利用料)により賄われており、税金は投入されていない。基本的な利用方法は、シングルライド(3.5ドル/30分)、デイパス(1日30分以内乗り放題・15ドル/1日)、年間会員(1日45分・179ドル/1年)から選択可能。

市内各地に設置されたドッキングステーションから利用可能(ニューヨーク市HP掲載資料)
市内各地に設置されたドッキングステーションから利用可能(ニューヨーク市HP掲載資料)
自転車専用レーンを走るCitiBike(ニューヨーク市HP掲載資料)
自転車専用レーンを走るCitiBike(ニューヨーク市HP掲載資料)

② 自転車専用レーンの設置 安全なサイクリング環境の確保のためにニューヨーク市内には各所に自転車専用レーン(概ね歩道と車道の間)が設置されている。自動車専用レーンは年々拡充を続けており、運輸局はニューヨーク市内の5つの自治区全てを接続できる自転車専用レーンシステムの構築を目指している。

緑色に舗装された自転車専用レーン(ニューヨーク市HP掲載資料)
緑色に舗装された自転車専用レーン(ニューヨーク市HP掲載資料)

③ バス専用レーンの設置 特定の時間帯にバス専用レーンを設ける取組。バス専用レーンは赤くペイントされ、「BUS ONLY」の文字が書かれている。バスの運行自体は独立公益会社であるMTA(Metropolitan Transportation Authority)が行っているが、運輸局はバス専用レーンを整備すること等によって、運航スピードを向上させ、減少傾向にあるバス利用者の増加を目指している。
※ニューヨーク市におけるバスサービスの向上の取組の詳細については、下記のブログ記事参照
 ニューヨーク市におけるバスサービス向上の取組 – Japan Local Government Center (jlgc.org)
 ニューヨーク市におけるバスサービス向上の取組② – Japan Local Government Center (jlgc.org)
赤くペイントされたバスレーン(ニューヨーク市HP掲載資料)
赤くペイントされたバスレーン(ニューヨーク市HP掲載資料)


 以上、2010年代からスタートしたニューヨーク市のストリート改革の取組の事例の一部について紹介してきた。これらの事例をみると、ストリート改革の基本的な考え方として、プラザ・プログラムやカー・フリー・アースデー、サマー・ストリーツにように「ストリートを公共空間として利活用」しつつ、自転車やバスの利用促進の取組のような「自動車に依存しない交通インフラへの転換」を進めていることがわかる。
 次の記事では、ニューヨーク市ではどのような根拠に基づいてこれらの取組を進めているのか、基本計画や各種プラン等を紹介した上で、今後のストリート改革における展望を次期市長選の動向を踏まえて考察してみることとし、最後に日本において近年スタートしたストリート改革の取組について紹介する。

(安浪所長補佐 熊本市派遣)