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ウィスコンシン州ウォーカー知事:行財政改革は公務員のためにも州民のためにも不可欠

7月9日、ニューヨークに拠点を置くシンクタンク、マンハッタン・インスティテュート主催のイベントで、ウィスコンシン州知事のスコット・ウォーカー氏が演説し、過去二年の経験や教訓について語った。同知事は、2010年に初当選した直後から、州の財政問題を解消するために州職員労働組合等と戦い、結局、法改正によって同職員の団体交渉の権利を一部廃止するなどして州の問題解決の選択肢に柔軟性を与えた。それからまもなく知事のリコール運動が繰り広げられ、今年の6月上旬に住民投票が行われたが、ウォーカー知事は信任された。

知事は、財政難にあえぐ同じ中西部地方のイリノイ州を引き合いに出しつつ、ウィスコンシン州の対策を説明した。イリノイ州は、個人所得税を67パーセント、法人税を47パーセント引き上げても、州経営施設の閉鎖や職員数削減に追い込まれている。これと対照的に、ウィスコンシン州は所得税を減税し、事業者にも様々なインセンティブ(租税特別措置)を与えたが、急激な職員の解雇も不必要だった。その違いは、イリノイ州の単純な増税+歳出削減(人員削減・施設閉鎖)という考え方と、ウィスコンシン州の経済振興(ビジネス環境改善)+歳出効率化という考え方の違いによる。チーフ・エグゼクティブという雑誌が、毎年、州別のビジネス環境のランキングを発表しているが、改革の成果はそのランキングの変化でも示されている。ウィスコンシン州は2010年に41位だったのが、2011年に24位、2012年には20位まで上昇してきた。ウィスコンシン州による歳出効率化の一例を挙げると、従来は、団体交渉で決められた条件により、教育関係職員の健康保険は特定の一事業者からしか買えないこととなっていた。これを競争制に切り替えた後、地元の教育委員会は場合によっては数百万ドルもの節約をすることができた。また、別の例としては、低所得者の医療保険制度(メディケイド)の加入資格を、親や職場、雇用主など他の健康保険提供者の保険に加入することができる場合はメディケイドに加入できないようにする等、常識的に改善したことが説明された。これにより、上昇する一方の医療保険コストも抑えられる。

スコット知事はこう訴えた。「私は公務員が大好きだ。ただ、公務員の労働組合は嫌いだ。組合が自分の利益を優先し、一番優秀な職員を押さえ込むケースも多い。州民のためにももちろん、よくがんばってくれる公務員のためにも、現在の財政問題を解決しなければならない。さもなければ公務員の年金も医療保険も破綻し、みなが苦しむことになる。」

最後に知事は、改革の成果を元に、これからウィスコンシン州を業界に売り込み企業誘致を図ると同時に、現在の連邦政府や他の州の行財政難が改善できるよう、全国を回って同意見の政治家を擁立し、メディアや演説を通して国民に訴える予定だと語った。

2012年7月10日

シニア・リサーチャー マスュウ・ギラム

参考 チーフ・エグゼクティブ誌の州別ビジネス環境ランキング記事