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コロナウィルス対策:連邦緊急事態管理局からの葬儀等の補助金

アメリカでは、人が亡くなったとき、葬儀や埋葬を執り行うのに最低数千ドルかかるので、貧困家庭にとっては通常でも悩ましい問題ですが、パンデミックによる失業や生活困難があるとさらにそうなり、コロナウィルスにより家族が亡くなっても葬儀等の費用を負担できない状態に陥る家庭が少なくありませんでした。そのため、ニューヨーク市では、大勢の家族がやむを得ず亡くなった家族を市営の共同墓地のハート島(Hart Island)で無料で埋葬しました。2021年3月25日のNew York Timesによると、昨年から今年にかけて埋葬された方の全てがコロナウィルスによる犠牲者とすると、その数は3,000人以上に上り、同市でコロナの犠牲になった3万人以上の約10分の1に当たります。

市民からの要望を受け、ニューヨーク選出のAlexandria Ocasio-Cortez下院議員とCharles Schumer上院多数党院内総務が力を合わせ、本年3月に成立したコロナ対策法に連邦緊急事態管理局(FEMA)の葬祭費用に対する補助制度の拡大のための予算を盛り込みました。

2021年4月12日から、「2021年コロナウィルス対応救済補正予算法」と「2021年米国救助計画法」に基づき、2020年1月20日以降のコロナウィルスによる死亡者に対し、FEMAから葬儀や火葬・埋葬等のための補助金が提供されます。

緊急事態や災害のある時、スタッフォード法に基づき、州知事の依頼に応じて大統領は緊急事態宣言を州ごとに発出できます。同宣言がある場合、FEMAは従来、その災害などによる死亡者があると、大統領の認めるところにより、葬儀等の費用の補助金 を提供します。しかし、このプログラムは予算上・制度上、コロナウィルスによる大量のケースに追いつかない状態であったため、3月に成立したコロナ対策法により同制度を拡大し、また、申請の手続きが簡素化されました。さらに、大統領の権限ではなく、連邦議会が直接FEMAに50州・5準州・コロンビア特別区・3つのインディアントライブに 同支援を与える権限を与えました(ご参考まで連邦議会調査局(CRS)のレポートをご覧ください)。

申請できるのは米国民、永住者又は合法的な在住者で、米国内で2020年1月20日以降コロナウィルスにより死亡した者(死亡者の国籍や法律上の在住ステータスを問わない)の葬儀等に係る費用を負担した者です。しかし、合法的な在住者でも、観光・留学・臨時的な労働の滞在者が申請できません。また、成人していない(18歳未満の)子供が要件を満たさない者の代わりに申請することも認められません。

申し込みは電話のみ。20分ぐらいかかると言われていますが、それ以上かかることもありそうです。受付は平日の東部時間午前9時から午後9時までで、オンラインは書類の提出に限っています。電話で申請・登録する際にアカウントを作り、その後葬儀等の支払いの証明などの書類をオンライン、ファクス、又は郵便で提出します。

電話登録をするとき、申請者の身分証明や連絡先などに加え、死亡者の死亡届や身分証明なども必要であり、申請者と(あれば)死亡者のSSNも必要です。

葬儀社は申請できず、葬儀の支払いを行った個人しか申請できません(多数の支払者がある場合、原則として一人が代表となります)。

2人以上で葬儀等の支払いをした場合であっても、申請を一つにまとめることが求められます。代表者1名を定めるか、あるいは代表者以外に1名までの合同申請者が認められます。それ以上の支払者がある場合、申請者・合同申請者にはなれないけれど、支払いの証拠書類を提出すれば補助金がもらえるようです。ただし、その場合全員が領収書などの支払いを証明する書類を提出しないといけません。もし、代表者一人が申請し、支払証明も代表者がすべて提出すれば、その人が補助金の全額を受け取ります。

補助額は葬儀1回につき9,000ドルが上限であり、補助率は上限額まで100%です。1人の申請者が複数の死亡者の葬儀等の費用を負担した場合は最高35,500ドルまで申請できます。ただし、補助金が各州の連邦政府の緊急事態宣言により実施されるので、この上限額は州ごとに定められたもので、複数の州(または準州・コロンビア特別区・トライブ)に死亡者があり、州ごとに申請すると、一人の申請者でもその35,500ドルの制限以上に申請できるようです。

認められる費用は:

  • 遺体の搬送
  • 骨壺あるいは棺
  • 墓場あるいは骨壺の収納スペース
  • 墓石あるいは墓標
  • 葬儀の準備
  • 牧師など
  • 葬儀所の設備やスタフ
  • 火葬あるいは埋葬
  • 複数の死亡届の作成
  • 州や地方団体によって法律上義務付けられている費用
  • 費用の全額が他の葬儀専用の財源(事前払いや葬儀用の保険、ドネーションなど)によりカバーされた場合は申請できません。一部だけしかカバーされない場合、自己負担額が補助の対象となります。生命保険や貯金等の財源があっても関係ありません。収入の制限などもありません。

    4月19日現在のプレスリリースによると、FEMAには101,000以上の申請がありました。現時点では、締め切りがありません。

    ニューヨーク市も、社会サービス局の人事課を通して、補助金を提供しています。コロナウィルスのため、埋葬手当を900ドルから1,700ドルに増やし、葬儀全体の費用の最高金額を1,700ドルから3,400ドルまで引き上げました。場合によって助かるかもしれませんが、金額が比較的に少ない上に、FEMAの補助金と重ねることができません。もし、これも申請すれば、FEMAの補助金から控除されます。

    2021年4月22日現在、アメリカのコロナウィルスによる死去者は569,875名。当然、人間誰でもかかる可能性があり、かかれば、成り行きが保証できません。しかし、要因は様々ですが、パンデミック勃発の早い段階から明らかになったのは、ウィルスは平等に市民を襲ったわけではなく、貧困層の方が感染や重症化、また死亡の割合が高かったということです。また、前述のように、経済的に不利な家庭であれば、最悪の場合になれば、大変困難なことになります。従って、コロナウィルスに対する予防・治療・それからワクチン接種を実施する際に、この貧困で最も危険にさらされている人たちへの多大な配慮が必要であることが認められ、対応策に反映されました。結局、最後のお別れまで同様の対策を取る必要があると分かりました。

    Matthew Gillam

    上級調査員

    2021年4月23日