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ニューヨーク州及びニューヨーク市による新型コロナウイルス対応(3月26日現在)

全体像

ニューヨーク市

ニューヨーク市内で新型コロナウイルスの影響により売上が減少した中小の事業者に対する支援を行う。従業員100人未満で、利益が25%以上減少した等の基準を満たす事業者が7万5千ドル(約825万円)までの無利子融資を受けることができる。

また、従業員5名未満の小規模事業者で同様の基準を満たすものに対し、雇用維持のため40%の賃金助成を2ヶ月間行う。

ニューヨーク市の小規模事業者支援:https://www1.nyc.gov/site/sbs/businesses/covid19-business-outreach.page

市は、市内の学校に通う生徒の親向けに、事業者に対する制限、住民が健康に過ごすための対応及び感染が疑われる場合の対応とともに、最新の感染動向について情報提供を行う。

ニューヨーク市の新型コロナウイルスへの対応:https://www1.nyc.gov/site/doh/health/health-topics/coronavirus.page

デブラシオ市長は、親や学校関係者の要望を踏まえ、3月15日に、翌16日から少なくとも4月20日まで市内の学校を閉鎖することを決めた。3月23日からは遠隔教育が開始された。また、生徒向けの昼食を学校で受け取ることができる。

規制の関係でいえば、3月24日、ニューヨーク市は3月22日の州の命令を受け、social distancing(人と人との距離をとること)の指示に反して公園などに集まっている人に対する対策を示した。公園の施設やサービスの多くは閉鎖又は入場規制が行われるとともに、ニューヨーク市警は23日以降、通報によりsocial distancingに係る取締を行うこととした。また、クオモ州知事は25日の記者会見で、通行人の間隔を十分に確保するため、一部の道路を閉鎖する考えを示した。ニューヨーク市は26日より道路の閉鎖を開始した。

また、3月26日の報道では、市公園局が少なくとも80の公園でバスケットボールのゴールを撤去することが報じられた。これらの公園では若者が警察の指導に反して集団でバスケットボールをしていた。

ニューヨーク州

州による行政命令

ニューヨーク州は、新型コロナウイルスによるビジネスや個人への影響を緩和するための様々な措置をとっている。主なものは以下のとおり。

  • 理髪店、美容院、タトゥー・ピアスのサロン、ネイルサロン、脱毛サロンその他の個人向けサービスは、3月21日20時をもって閉鎖する。
  • 3月21日付の行政命令に基づき、州内の住宅ローンを提供する金融機関は、新型コロナウイルスの影響を受けた借り手に対し、90日間の猶予期間を設ける。(ただし義務ではなく、遵守されるかどうかは不明)
  • 3月20日付の行政命令により、州民生活にとって「必須でない」(non-essential)サービスに対し、在宅勤務を義務化(出勤を禁止)
  • 行政命令の対象の例外とされる州民生活にとって「必須な」サービスとして、物流、メディア、倉庫、食品販売及び製造、流通(酒類を含む)、ドラッグストア、保健・医療関係、電気・インターネット・上下水道等のインフラ関係、銀行その他の金融業がある。
  • ニューヨーク州、ニュージャージー州、コネチカット州、ペンシルバニア州のショッピングモール、遊技場、ボーリング場は3月19日20時までに閉鎖する。
  • 3月18日に州は新型コロナウイルスの影響で自宅待機が求められるニューヨーク市民に対し、雇用の保全及び給与の補償に係る法案に署名した。
  • 3月18日に州は州内のすべての学校を、4月1日までの2週間閉鎖する行政命令を発出した。
  • 3月16日以降別途通知するまでの間、カジノ、スポーツジム、劇場は閉鎖する。また、レストラン及びバー(の客席)を閉鎖し、テイクアウトとデリバリーのみ認める。
  • ニューヨーク州内の公立の公園に係る入場料を免除する。
  • 検査は、医療機関の指示に基づき、無料で行われる。

    詳細

    雇用の保全と給与

    新型コロナウイルスの影響で自宅待機(義務的なもの、予防的なもののいずれも含む。)が求められる労働者及び出勤できない者に対する対応は、雇用主の規模により異なる。州のウェブサイトによると以下のとおりである。

    □従業員10名以下、売上高100万ドル(1.1億円)未満の事業者に対する義務:

  • 自宅待機期間中の雇用を保全すること
  • 自宅待機期間中の補償として、特別休暇及び(短期)障害手当を保障すること(15万ドル(1650万円)までの給与補償を含む)

    □従業員11名以上99名以下又は従業員10名以下、売上高100万ドルを超える事業者に対する義務:

  • 最低5日間の有給休暇を付与すること
  • 自宅待機期間中の雇用を保全すること
  • 自宅待機期間中の補償として、特別休暇及び(短期)障害手当を保障すること(15万ドル(1650万円)までの給与補償を含む) ※申請方法はリンク参照

    □従業員100名以上の事業者又は公的機関に対する義務:

  • 最低14日間の有給休暇を付与すること
  • 自宅待機期間中の雇用を保全すること

    これらの支援策は、在宅勤務が可能な者には適用されない。また、雇用主が新型コロナウイルスの影響で休業している労働者については、失業保険が適用される。

    エンパイアステート開発公社による個人用防護具(PPE)生産の支援

    州は新型コロナウイルス対策に不可欠の物資が十分に確保できていないことを踏まえ、3月20日、知事が州内の事業者に個人防護具(マスクや手袋、防護服等)の生産を呼びかけるとともに、エンパイアステート開発公社に対し、州で購入する調整を行うよう呼びかけた。生産機械の更新に係る州の補助も含まれる。

    概要:https://www.governor.ny.gov/news/governor-cuomo-signs-new-york-state-pause-executive-order

    知事のツイート:https://twitter.com/NYGovCuomo/status/1241040393086685186

    エンパイアステート開発公社による支援の呼びかけ:https://wlea.net/statement-from-empire-state-development-corp/

    エンパイア開発公社による個人防護具のガイドライン:https://esd.ny.gov/guidelines-personal-protective-equipment-ppe

    住居及び商業テナントの立ち退き等に係る90日間の猶予

    3月16日、ニューヨーク州司法事務総長は、州内の裁判所に対し、不要不急の立ち退きの命令の執行を延期するよう求めた。これは州知事より州最高裁長官に対する司法手続量を減少させる要請を踏まえたものである。実際には差し押さえの執行は引き続き行われており、批判が出たことを踏まえ、3月20日に州が発出した行政命令には、90日間の立ち退き猶予が盛り込まれた(なお、この行政命令には、司法手続に要する期間の1か月延長も盛り込まれた)

    クレジットカード延滞金やオーバードラフトの違約金免除

    3月21日付の行政命令において、州知事は銀行等に対し、延滞やオーバードラフト(借越)に係る違約金等を免除するよう求めた。また、同行政命令に、金融サービス局長官に手数料の制限又は軽減に係る規則の制定権を付与する規定を盛り込んだ。しかし、金融機関の監督権は州と連邦の共管になっていることもあり、この措置がどの程度実効性を有するかはまだ明確ではい。

    公共交通

    3月25日、メトロポリタン交通公社(MTA)は、乗客の著しい減少及び従業員の安全確保のため、バス及び電車の減便を発表した。運行は続ける。MTAは大幅な収入減に見舞われており、3月17日付でニューヨークタイムズでは、連邦に対して40億ドル(4400億円)の支援を要請した旨が報じられている。

    マスユー・ギラム

    上級調査員