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ニューヨークの非常事態宣言に関して(3月18日現在)

予測通りますます深刻化するCovid-19(新型コロナウィルス)の拡大に対し、連邦政府は3月13日午後、非常事態宣言を発出し、連邦議会とホワイトハウスによる経済対策案作成の動きが続いています。この問題に対するトランプ大統領の発言のトーンは、先週までの比較的楽観的な見方から、慎重なものになってきました。大統領周辺の顧問や専門家が対応に努めています。国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ部長や米国財務長官のスチーブ・ムニューチンが医療関係と経済対策をそれぞれリードしているようです。経済対策は、ホワイトハウスと議会の交渉の結果、一兆ドル規模でまとまりつつあり、検査体制改善や国民への支援金の直接給付が検討されています。

ニューヨーク市では、17日、ビル・デブラシオ市長が48時間以内のShelter in Place(外出禁止)命令発出に向けた準備を呼び掛けましたが、すぐに、アンドリュー・クオモ州知事が否定しました。知事は「外出禁止を求める規制は発動しない」(“There’s not going to be any, ‘You must stay in your house,’ rule,” )と言い切って、市全体の隔離などは市長が決めることではなく、知事の権限で、仮に実施するのであれば州全体で行うと主張しました。急速に変化する状況の中、今はそのような極端な手段を取らなくても、状況の悪化に応じて実施は否定できません。

知事と市長の対立はよく知られているので、ニューヨーク市民はこの論戦を見て全く驚きませんでした。

ニューヨーク州執行部法第24条(New York State Executive Law Section 24)によると、地方自治体の長は外出禁止令等を発出することは可能です。市長と知事の法解釈に食い違いがあることに加え、知事の立場は、限られた範囲で外出禁止令を実施しても実効性がなく、広域で実施しないと市民が隣の自治体に行って活動するだけであるから、知事が実施すべきという主張です。ニュージャージー州ホーボーケン市と隣のジャージーシティー市でそのような現象が見られます。ホーボーケン市長が17日に外出禁止令を発出しましたが、18日に、ジャージーシティー市長はその必要性に疑問を呈し、州レベルで実施しないと意味がないと発言しました。

18日正午前に、クオモ知事の記者会見が行われ、ニューヨーク州内では従業員の5割以下しか職場に出勤できないという行政命令や隔離が必要な州民への支援の法案などを発表しました。

感染者数が上昇するなか、どこまでの措置を取るべきかという議論が続きそうです。キーポイントはおそらく、その上昇が予測通りであるか、あるいはそれ以上またはそれ以下になるかによって決まるでしょう。

Matthew Gillam

上級調査員