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ニューヨークの非常事態宣言に関して(3月13日正午現在)

世界保健機関(WHO)によって3月11日にパンデミックと表明された新型コロナウイルスの拡大を阻止するため、ニューヨークのビル・デブラシオ市長は、12日に非常事態宣言を発出しました。これに先駆けて同月7日にアンドリュー・クオモニューヨーク州知事が州の非常事態宣言を発出しました。

3月13日正午時点で、連邦政府・トランプ大統領はまだ宣言を発出していませんが、準備中だといわれています。米国保健福祉省のアレックス・アザー長官は1月31日に公衆衛生上の緊急事態を宣言しましたが、これは公衆衛生や医療制度に限って効力を有するもので、大統領の宣言ほど幅広い効力を有するものではありません。

非常事態宣言は、設定されている範囲内で、法律や条例の規定にかかわらず、調達・外出禁止令・職員の配分等の対応を命じることができます。

市の場合、市長は相当広範な権限を持っています。大規模イベントや集会の制限・延期・中止、バーやレストラン、店舗の営業時間や人数制限、学校の閉鎖等を命令することができます。また、経済への影響を緩和するために、中小企業に低金利ローンなども提供すると発表しました。

この中で、ニューヨーク市健康病院公社は市立病院だけでなく、他の病院や医師にも指示をする権限があります。

ニューヨーク州は、報道によると、3月1日に州内で初の感染者が確認されると、クオモ知事自ら対応案を作成し、危機管理当局のミーティングを開いてその案を検討しました。その際、対応案の各項目について、州が法律上実施する権限を有しているかを確認したところ、一部の項目(感染者の隔離や検査の実施等)については権限を有しないことが明らかになりました。そのため、州に権限を保持させるための速やかな関係各法の改正を提案し、同月3日の深夜に州議会が改正案と40億ドルの緊急予算案を可決・採択しました。反対意見はあったものの、緊急性に鑑みて決定を先送りする余裕はなく、圧倒的多数で可決されました。なお、本改正は2021年4月30日までの時限であり、それまでに更新されない限り失効します。

法改正の必要性に係る議論はさておき、改正により州知事の権限が拡大しました。ただし、現時点で知事がとった対策は、改正がなくても実施できた可能性が高い内容にとどまっています。3月2日に、州の管轄下にある健康保険の会社や政府が提供するメディケイドがコロナウイルスの検査費用を完全にカバーすることを命じたことに始まり、500人以上の集会の禁止、州立大学の遠隔教育の実施、セントパトリックスデーパレードの延期、ブロードウェイの劇場閉鎖等を発表してきました。

ニューヨークに限らず、全国的におそらく一番大きな問題は検査体制です。州知事、市長の双方が政府関係の医療施設や民間会社と相談し、この機能を拡大しようとしています。また、クオモ知事は、州ブランドの手指消毒剤まで紹介しました(予防と価格つり上げを防止する狙いで)。

ここ数日、毎日のように事態が目まぐるしく変わる中で、次の展開を予測するのはきわめて困難です。国立アレルギー・感染症研究所のファウチ部長は、感染の拡大が収束するまで、在宅勤務やイベント・集会の自粛が2週間から8週間まで続くという見通しを示しました。さらに事態が悪化すれば、新たに学校を閉鎖したり、最悪の場合には公共交通機関をシャットダウンするとともに、その他の交通手段も含めた移動制限を実施することまで考えられます。

これからの展開を、しっかり手を洗いながら見守るしかないでしょう。

マスユーギラム

上級調査員