COVID-19に関する取締り

未だに新型コロナウィルスの収束が見えない中、ニューヨーク州など国内各地においてはその蔓延に歯止めを掛けるため様々な規則を設けている。国外や他州からの移動した者への隔離生活の要請、インドア・ダイニングの禁止、さらには集会時の人数制限や外出時のマスク着用義務など日々の生活に密接した事項も多い。これら規則に罰金などのペナルティを科す場合もあり、行政側による蔓延を食い止めたいとする必死の姿勢が窺える。

取締りを受けた飲食店

取締りも実際に行われているようだ。先月にはニューヨーク市内スタテン・アイランドにあるバーのオーナーが、店内において客に飲食物を提供した容疑で逮捕された。オーナーは以前にも同様の違反歴があったようだが、今回は客に扮した私服の保安官代理が、店内で食べ物をオーダーするなどのおとり捜査を行ったため再度摘発された(車両による逃走時、保安官代理に対する接触行為もあったとされる)。店内における食事の提供及び夜10時過ぎまでの営業違反のため罰金は数千ドル。酒類提供ライセンスも停止される。ただでさえ少ない客を逃したくないとの思いがあっての違反だろうが、テイク・アウトや路上席での営業でなんとか凌いでいる他店の状況を考慮すると、取締りもやむを得まい。

隔離規則違反も摘発されている。昨年11月には、ハワイ州マウイ島において、グラフィック・デザイナーの女性が、サンフランシスコからの移動後に州の規則に従わなかった理由で逮捕されている。彼女は、隔離場所であった宿泊施設に滞在せずに旅行を継続して行方をくらませたが、現地警察による追跡調査で身柄を拘束された。警察は彼女がソーシャルメディアに投稿した大量の写真を手掛かりに居場所を突き止めている。

また、同州ではカウアイ島においてもカップルが逮捕されている。彼らは自らがコロナウィルスに罹患していることを認識していたが、サンフランシスコの空港係員による搭乗中止の指示を無視して4歳の子供と飛行機に搭乗、その後、到着地の同島において現地警察により逮捕されている。有罪になれば、禁固1年と2,000ドルの罰金を科せられる可能性があるようだ。

マウイ島の事案のように、追跡調査まで行い居場所を特定する例などは、医療機関の数も少なく、蔓延が一気に拡大する狭小な島の事情などを鑑みて、絶対にウィルスを拡散させたくないという警察(行政)の強い姿勢が表れているものと言えるだろう。

これら取締まりの難易度は、違反者の数や違反形態によって左右されそうだが、前述のように、店舗における違反や違反者が航空機などの特定の交通機関を利用する場合などは、その行動範囲も絞られるため、比較的、解決しやすい事例だろう。反面、違反の成否を確認する対象が多数である場合には、取締りが困難になると言えそうだ。

トンネルにおける検問所

現在、ニューヨーク州においては、他州(隣接州を除く)からの移動者について一定条件の元に隔離措置を課すことが決められており、旅行者はトラベラー・ヘルス・フォーム(PCR検査の実施の有無や症状などを記載する用紙)の提出が義務付けられている(空路の場合には到着空港において、自家用車など陸路での移動者はオンラインによって提出)。違反者には10,000ドルの罰金が科せられるが、特に、車社会の米国において、自家用車など陸路で州内へ移動する違反者をどのように取締まるのか非常に興味深いところである。この点、ニューヨーク市は、地理的に島で構成されている利点を生かし、トンネルや橋などにチェックポイント(検問所)を設けて取締りを行っている。しかし、実際には市長自身も、一日に何万台も通る車両に対しての取締まりは現実的ではないと理解しているためか、「旅行者に対するパワフル・メッセージにはなる」との発言もあり、実質的な取締りよりも人々に州間移動を伴う旅行を思いとどまらせる性格が強い規制とも思われる。

筆者がマンハッタン内を歩いている限り、インドア・ダイニングを公然と行っている店舗は確認できず、ビジネスに対する罰則付き規則の効果は一定程度あると思われる。一方で、他州からの移動者への規制など、個人に対する取締りの実体については不透明な部分もあるが、たとえ私権制限を伴うものであっても躊躇なく「罰則を設けて規制する」ことが、行政の一つのスタンダードであると感じられる。

つい先日も、ニューヨーク州のクオモ知事は、ワクチン接種が遅れている病院に対し、指定期限内までに割り当てられたワクチンの接種を行わない場合には、病院に対して10万ドルの罰金を払わせるとの発言があったばかりである。現場で奮闘している医療機関に対しても罰則を付すことには容赦がないようだ。

現在、第3波に見舞われている中、今後新たにどのような規則や罰則が規定され、どのように取締まっていくのか、注目していきたい。

(柳井所長補佐 警視庁派遣)