1.New Mexico’s Turn Toward Renewable Energy
2019年、ニューメキシコ州において、ニューメキシコ・エネルギー転換法(The New Mexico Energy Transition Act(以下、「ETA」という。)が施行された。 これは、同州が消費する電気エネルギーを2030年までに50%、2040年までに80%、2045年までに100%、再生可能エネルギーに転換することで、温室効果ガスを削減し、環境に配慮したクリーンな社会を構築しようとするものである。
ETAが施行されてから、同州は、公共事業に係るエネルギー政策の見直しや再生可能エネルギーに関する職業訓練の実施、大気汚染による健康被害調査の実施など、様々な事業を行っている。また、石炭を燃料とした火力発電所の閉鎖を進める一方、風力や太陽光による発電を推進※²しており、今では、再生可能エネルギーに関する分野は、州の大きな産業の一つにもなっている。 さらに、どのようなスケジュール、プロセスで再生可能エネルギーを生み出すかを示したロードマップの作成や、再生可能エネルギーを使用することによる税額控除法案※³を可決するなど、実際に各コミュニティに出向き住民の希望をヒアリングしながら、進めた案件も多数存在する。
このような取り組みを行う際、総じて、どのような分野から始めれば良いのか、多くの州が悩んでいるという実態があるが、ニューメキシコ州では、輸送用の燃料が州の大気を汚染している大きな要因となっていたため、まずは、燃料に占める炭素強度(エネルギー消費当たりの二酸化炭素排出量)の基準目標を定めることから始めている※⁴。
2.Habitat for Humanity and Atmos Energy’s Zero Net Energy Effort
Greeley-Weld Habitat for Humanityは、様々な社会的事情を抱える家族に対して、ボランティアと協力しながら安価で住宅を提供している非営利組織である。 Atmos Energyは、テキサス州ダラスに本社を置く、国内最大規模の天然ガスのプロバイダーであり、8つの州(テキサス州、ルイジアナ州、ケンタッキー州、テネシー州、バージニア州、コロラド州、カンザス州)で、累計320万人の顧客にサービスを提供している。 コロラド州知事が2019年に、温室効果ガス排出量を2030年までに50%、2050年までに90%削減するという目標を掲げたことをきっかけに、 Atmos Energy は、自社のロードマップを作成し、2017年を基準に、2035年までに温室効果ガス排出量を50%削減する計画を策定している。 また、Greeley-Weld Habitat for Humanityの事業に賛同し、100万ドル以上の寄付を同団体へ行っている。
両団体は、数十年にわたってパートナーシップ提携をしており、安価な光熱費及び住宅の購入を希望している人々に対して、再生可能エネルギーを活用した住宅を提供しており、直近では、コロラド州エバンスにおいて、再生可能な天然ガス(RNG)※⁵を燃料とするゼロネットエネルギー(ZNE)住宅を誕生させている。
この住宅は、エネルギー効率の良い電化製品、優れた断熱材、太陽光発電等を取り入れることで、月々の光熱費が50ドル未満に収まるようにできており、通常の住宅よりも、年間の光熱費を2,000ドル削減できるものになっている。
※¹CSG(The Council of State Governments)は、米国の州、属領、コモンウェルスの立法、司法、行政の三権に関わる公選職、任命職(知事、州議会議員、各種行政官等)を支援するために設立された団体である。