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全米州政府協議会(CSG)の年次総会に参加

 12月1日~4日の4日間、CSG(全米州政府協議会)※¹がニューメキシコ州サンタフェで開催した年次総会に出席した。

 当総会では、各州における再生可能エネルギー政策を始め、教育や労働市場の現状、人種間格差への対応やSNSが発展した現代における適切な情報発信の手法など、行政分野における様々な事例や課題について発表・討論が行われた。

 本稿では、筆者が参加したセッションのうち、2つの概要を紹介する。

1.New Mexico’s Turn Toward Renewable Energy

 (ニューメキシコ州における再生可能エネルギーへの転換について)

 2019年、ニューメキシコ州において、ニューメキシコ・エネルギー転換法(The New Mexico Energy Transition Act(以下、「ETA」という。)が施行された。

 これは、同州が消費する電気エネルギーを2030年までに50%、2040年までに80%、2045年までに100%、再生可能エネルギーに転換することで、温室効果ガスを削減し、環境に配慮したクリーンな社会を構築しようとするものである。

 ETAが施行されてから、同州は、公共事業に係るエネルギー政策の見直しや再生可能エネルギーに関する職業訓練の実施、大気汚染による健康被害調査の実施など、様々な事業を行っている。また、石炭を燃料とした火力発電所の閉鎖を進める一方、風力や太陽光による発電を推進※²しており、今では、再生可能エネルギーに関する分野は、州の大きな産業の一つにもなっている。

 さらに、どのようなスケジュール、プロセスで再生可能エネルギーを生み出すかを示したロードマップの作成や、再生可能エネルギーを使用することによる税額控除法案※³を可決するなど、実際に各コミュニティに出向き住民の希望をヒアリングしながら、進めた案件も多数存在する。

 このような取り組みを行う際、総じて、どのような分野から始めれば良いのか、多くの州が悩んでいるという実態があるが、ニューメキシコ州では、輸送用の燃料が州の大気を汚染している大きな要因となっていたため、まずは、燃料に占める炭素強度(エネルギー消費当たりの二酸化炭素排出量)の基準目標を定めることから始めている※⁴。

2.Habitat for Humanity and Atmos Energy’s Zero Net Energy Effort

 当該セッションでは、今回の総会のスポンサーとなっているGreeley-Weld Habitat for Humanity及びAtmos Energyが推進する「ゼロネットエネルギー(ZNE)住宅事業」の取り組みが発表された。

 Greeley-Weld Habitat for Humanityは、様々な社会的事情を抱える家族に対して、ボランティアと協力しながら安価で住宅を提供している非営利組織である。

 Atmos Energyは、テキサス州ダラスに本社を置く、国内最大規模の天然ガスのプロバイダーであり、8つの州(テキサス州、ルイジアナ州、ケンタッキー州、テネシー州、バージニア州、コロラド州、カンザス州)で、累計320万人の顧客にサービスを提供している。

 コロラド州知事が2019年に、温室効果ガス排出量を2030年までに50%、2050年までに90%削減するという目標を掲げたことをきっかけに、 Atmos Energy は、自社のロードマップを作成し、2017年を基準に、2035年までに温室効果ガス排出量を50%削減する計画を策定している。

 また、Greeley-Weld Habitat for Humanityの事業に賛同し、100万ドル以上の寄付を同団体へ行っている。

 両団体は、数十年にわたってパートナーシップ提携をしており、安価な光熱費及び住宅の購入を希望している人々に対して、再生可能エネルギーを活用した住宅を提供しており、直近では、コロラド州エバンスにおいて、再生可能な天然ガス(RNG)※⁵を燃料とするゼロネットエネルギー(ZNE)住宅を誕生させている。

 この住宅は、エネルギー効率の良い電化製品、優れた断熱材、太陽光発電等を取り入れることで、月々の光熱費が50ドル未満に収まるようにできており、通常の住宅よりも、年間の光熱費を2,000ドル削減できるものになっている。

※¹CSG(The Council of State Governments)は、米国の州、属領、コモンウェルスの立法、司法、行政の三権に関わる公選職、任命職(知事、州議会議員、各種行政官等)を支援するために設立された団体である。

※²2021年の米国エネルギー情報局(EIA)のデータによれば、ニューメキシコ州における州の公益事業の純発電量は、38.7%が石炭から、33%が風力と太陽光から、28.2%が天然ガスから供給されている。なお、1990年においては、90%が石炭から供給されていた。

※³ソーラーパネルシステムの設置に係る総費用に対して10%の税額控除(最大6,000ドル)を受けることができるもの。

※⁴同州では、輸送用燃料に係る炭素強度(エネルギー消費当たりの二酸化炭素排出量)を、2030年までに20%以下にするという目標を掲げている。

※⁵RNGとは、農場の有機性廃棄物や埋立物、廃水汚泥を発酵・精製処理して得られるバイオガスやバイオメタンのこと。

(柿本所長補佐 総務省派遣)