コンテンツへスキップ

ウエストポイント(米陸軍士官学校)を訪問

昨年末、現在教官として勤務されている米澤氏のお招きにより、ニューヨーク州ウエストポイントにある陸軍士官学校を訪問しました。米澤氏は、防衛省から同学校に派遣されています。

1 米陸軍士官学校の概要

米陸軍士官学校は、かの独立戦争の際にハドソン川の西側に位置する重要な軍事基地の一つであった場所に建てられたことから通称ウェストポイントと呼ばれています。米陸軍士官学校は、陸軍将校の養成機関として1802年に創立され、過去に2人の大統領、4人の米国以外の国家元首、20人の宇宙飛行士等を輩出し、大学ランキングとしては全米で14位(フォーブス高評価ランキング2016年)の名門校です。

入学に際しては下院議員の推薦が必要で、毎年約1万4,000人が受験し、約1,200名が入学します。

2 教育内容

通常の大学教育のほか、軍人としての軍事訓練(夏季:6月~7月)があります。徹底した少人数教育(最大18人/クラス)で、予習することを前提とした、教室での討議を重視した教育を行っています。私達が米澤教官の担当する専門課程の戦術授業を聴講した際に、教官が、生徒に発言を促し討論(質問を含む)を中心に進めていたことからもこの教育方針が判りました。

他の大学と大きく異なる点は、将来軍のリーダーとして必要な科学的問題解決能力を養うために、理工学から人文社会科学までの幅広い履修を行っていることや、指揮官としての立場を理解するために、毎昼食前、学生は広場に集合し、1年生(分隊員)、2年生(分隊長)、3年生(小隊長補佐・幕僚)、4年生(小隊長・上級指揮官)の立場で点呼を実施すること等があります。

3 日本語講座の開講に向けて

米国にある陸軍士官学校、海軍士官学校、空軍士官学校の中で日本語を教えていないのは実は陸軍士官学校だけです。このことは、将来の軍のリーダー、国家のリーダーとなる陸軍士官候補生にとって、「日本」について学ぶことができる機会が限定的であることを意味し、日米双方の陸軍にとって「日本について知る機会がない」ことが問題となっているとのことです。

そこで、まずは2012年から米澤教官のような交換幹部が派遣され専門課程の授業を行いながら、その傍ら、課外活動として日本語教育を行い(10名~20名/年)日本について「知る機会を提供」しています。しかし、課外活動は単位取得とは関係がないため参加意欲は低いのが現状です。将来的には日本語講座の開講を目指しており、海軍や空軍のように年間約100名程度が日本語講座を受講することで、日本を知る士官候補生を増やし、米国のリーダーとなる若者の中に知日派を育成し、日本の国益増進に寄与することを目指しています。

 4 古き良き伝統の継承

今回米陸軍士官学校を訪問する機会を通じて印象的だったことは、校内に、歴代のマッカーサー元帥やアイゼンハワー大統領らのカレッジリング(英語では、classification ringといい、任官/卒業を記念して作られるもの)が展示されており、敷地内には、「BEAT NAVY TUNNEL(海軍を倒せ)」と書かれたトンネルにライバルの海軍とのアメフト戦の記念パネルが展示されているなど古き良き伝統を大切にしていることです。

卒業後の5年間は、軍人(卒業時陸軍少尉が与えられる)として働かなければなりませんが、その後、多くの卒業生は、中途退役し政府・企業に再就職しており、政財界に幅広く先輩、同級生、後輩に至る卒業生の強固なネットワークを形成しています。この強固なネットワークは、伝統ある学校で全寮生活の中で培った仲間との絆そのものなのではないでしょうか。

(桜井所長補佐 警視庁派遣)