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米国州政府予算の今: 破綻か、希望の兆しか?

米国経済が緩やかな活性化の兆しを見せている一方で、各州政府は4年連続で財政難に向きあう見込みとなっている。過去3年間、各州の知事や議員は、予算の均衡を維持するために、社会的に弱い高齢者や障害者のためのプログラムをカットしてきた。また、州立大学の授業料値上げ、公立学校の支出削減、数千人もの公務員の解雇や彼らの福利厚生・年金支出の削減を実施した。

予算・政策優先度決定センター(The Center on Budget and Policy Priorities、米国の有力シンクタンク)によると、2012予算年度(多くの州では7月1日から始まる)が最も財政的に困難になるとされている。2012予算年度における44州とコロンビア特別区を合わせた予算不足額は、1,220億ドルに及ぶと見込まれている。そのため州財政が危機的状況に向かうのではないか、と心配されるところであるが、まずは早急かつ集中的な対策が必要である。(ほぼ全ての州において、知事が提出し、議会が承認する予算は、均衡予算でなければならないことになっている。そのためには州政府による支出削減・増税・基金の利用が必要である。)

2007年の経済不況の後、所得税や売上税による収入は急落する一方で、メディケイドという低所得者向け医療補助や、その他の高齢者・子供・失業者支援プログラムのような義務的支出は跳ね上がった。不況や高齢者・障害者人口の増加にともない、州政府は各種サービスに対するニーズの増加に直面しているのである。多くの州が、極めて厳しい支出削減に乗り出している-例えば、高齢者・障害者支援の支出を削減した州数は29、公教育部門の支出を削減した州数は34 に及び、さらには44 州で州政府職員数の削減が実施されている。また、政治的には評判を落とす原因になるにも関わらず、不況の後に30 州で増税(所得税、売上税、法人税)が決行されている。

州財政の見通しは未だ暗いままだが、僅かに希望の兆しがあるという見方もある。新たな活力ある経済成長の結果として、ここ1 年以上の間、税収は予想以上に伸び続けている。不況初期の多くの州では、税収を低く見積もって支出削減・増税を実施した。しかし経済が緩やかに回復するなかで、実際の収入は予想を上回る結果となっているのである。

2011年6月21日

執筆:Stephen V. Fasano, Senior Researcher

訳:石橋敬三